注意欠陥多動性障害(ADHD)とは?
注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、「不注意(集中できない)」「多動・多弁(じっとしていられない)」「衝動的な行動(考えるよりも先に動く)」などを特徴とする発達障害です。注意欠陥多動性障害の特徴は、通常7歳以前に現れます。学校や幼稚園保育園での集団生活の中で、ほかの子と比べて落ち着きのなさが極めて目立ってしまうの特徴があります。
ADHDの診断基準(DSM-5)
注意の欠如や多動性、衝動性の症状が、「それぞれ9項目のうち6項目以上当てはまる」、「6か月以上、その症状が持続している」、「学業を含む日常生活に良くない影響を及ぼしているかどうか」が、主な基準となっています。
【注意欠如の症状】
- 勉強中に不注意な間違いをする
- 活動中に注意を持続することが困難
- 話を聞いていないように見える
- 指示に従えず勉強をやり遂げられない
- 課題を順序立てることが困難
- 精神的努力が必要な課題を嫌う
- 必要なものをよく無くす
- 外的な刺激によってすぐに気が散る
- 日々の活動で忘れっぽい
【多動性・衝動性の症状】
- 手足をソワソワ動かす
- 席についていられない
- 不適切な状況で走り回る
- 静かに遊べない
- じっとしていない
- しゃべりすぎる
- 質問が終わる前に答え始める
- 順番を待つことが困難
- 他人を妨害し、邪魔をする
ADHDのお子さまが抱える困難さ
ADHDの特性を持つお子さまの多くは、その特性から、ルールが守れなかったり、お友だちとのトラブルが多かったり、忘れ物が多かったり…、家や学校で怒られてしまう場面がどうしても多くなりがちです。
また、ADHDの特性を持つお子さまの多くが、「寝つきが悪い」「ぐっすり眠れない」「夜泣きがひどい」「朝、起きられない」などの睡眠の課題を抱えていることも様々な研究で指摘されています。これも、脳の特性により、睡眠と覚醒のリズムを整えにくいためと考えられています。寝不足のままで学校に行かなくてはならないと考えたら、ぼんやりしたり忘れ物が多かったり、ということもなんだか納得できてしまいます。
そうした失敗体験の積み重ねから自己肯定感が低下し、“うつ”や“不安障害”などの二次障害を引き起こしてしまうことがあります。幼少期から療育に通うことで、「オレは衝動性が高いから、意識して列に割り込まないようにしよう」「私は忘れっぽいから、メモを取るようにしよう」などと、自分なりの対処法を身につけることができ、二次障害を防ぐことができます。
ADHDの特性を持つお子さまへのPal教室での療育実践例
Pal教室では、ABA(応用行動分析)の考え方を取り入れた療育を行っています。
ABAの基本的な考え方とは、行動の原因を子どものせいにするのではなく、子どもを取り巻く環境との相互作用の結果、として捉えるというものです。
ここで言う環境とは、物理的な状況もありますが、私たち大人や周囲の人的な状況も含まれ、特に小さなお子様の場合、大人との関わり方の影響がとても大きいと考えています。
私たちは療育を行う際に、子どもの行動について、A「行動の直前の出来事」、B「行動」、C「行動直後の出来事(結果)」という3つのフレームで分析を行っています。
このABCフレームを用いた分析により、A(環境の調整や私たちの指示の出し方)やC(行動に対しての私たちの反応など)によって、望ましくない行動を減らしたり、望ましい行動に変えることが出来る、特に「望ましい行動を褒めて増やしていく」というのがPal教室の療育の基本です。
例えば、ADHDの特性を持つお子さまの「席を立って動いてしまう」という行動には、「活動の中で動ける時間を作る」という環境調整を行ったり、「座ったときにすかさずほめる」「じっとしていた時間の長さをほめる」「座って話が聞けていたらニコニコマーク(トークン)を貼る」などして、成功体験を積み重ねてもらえるようにしています。
座るように指示をしても動き回ってしまうことももちろんありますが、不適切な行動にはできるだけ注目せず、さりげなく着席できるように椅子を近づけるなど調整し、座れた時にはニコニコマークを貼るなどして、その行動を強化しています。どうしても動き回ってしまうコンディションの時もありますが、本児にわかるように淡々と減点をする理由を説明しニコニコマークを一つはがすのみです。
子どもたちは、望ましい行動をしたときに褒められることで、自身の行動を望ましい方向に調整できるようになっていきます。また、たくさん褒められることで自信を持ち、別の場面(例えばPal教室ではなく学校場面)でも、似た状況の時に望ましい行動を選ぶことができるようになるのです。
お薬のこと
Pal教室の運営会社は、調剤薬局を運営している株式会社パル・オネストです。
ADHDの治療薬として、脳内のドパミンの働きを調整するコンサータ、ノルアドレナリンの働きを調整するストラテラとインチュニブの三種類が現在認可されています。
お薬の使用については、お母様お父様はもちろんのこと、お子さま自身も「なんで風邪でもないのに薬を飲むの?」と多少の抵抗感を持たれる方も少なくないと思います。
ですが、お薬に関してはこれまでにたくさんの調査研究があり、ADHDの症状が軽減され、二次障害の症状を減らすことができるとも言われています。
かかりつけの発達外来等でお薬についてお話が出て、不安に思われることもあるかもしれません。そんなときは身近なPal教室に相談してみるのも一つかもしれません。
注意欠陥多動性障害(AD/HD)に関するご質問と回答
- ADHDの診断がつかない?
3歳です。多動と癇癪がひどくて、公園に連れていけず、幼稚園にも行っていません。ADHDじゃないか?と医師に相談しましたが、はっきり診断をしてくれません。診断名がわかれば幼稚園でも加配の先生が付く、と聞きました。どうして診断名をつけてくれないのでしょうか? -
3歳のお子様にADHDの診断をつけるのは、とても難しいことです。
なぜなら、定型発達のお子様でも3歳くらいではまだ衝動性が優位だからです。
通常は、年齢を重ね様々な体験をし成長する中で、7歳くらいまでに理性と衝動性のバランスが取れてきます。
一方で、ADHDの診断がつくお子様は、7歳をすぎても衝動性と理性のバランスが悪い状態が続きます。 しかし、早期から療育を受けることで、衝動性と理性のバランスは比較的良く保たれるようになっていきます。
幼稚園や保育園に入園する際には、ADHDというラベルのついたお子様ではなく、ありのままのお子さまを見ていただき、お母様のご苦労も共感し、サポートしてくれる園を探されてみてはいかがでしょうか?